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で相談しながら時間をかけてケーキを食べcコーヒーを飲んだ。大柄の女の子は何回か首をひねりc小柄な女の子は何回か首を横に振った。マービンゲイやらビージーズやらの音楽が大きな音でかかっていたので話の内容まで聴きとれなかったけれどcどうやら小柄な女の子が悩むか怒るかしてc大柄の子がそれをまあまあとなだめているような具合だった。僕は本を読んだりc彼女たちを観察したりを交互にくりかえしていた。

    小柄な女の子がショルダーバッグを抱えるようにして洗面所に行ってしまうとc大柄な方の女の子が僕に向かってcあのすみませんcと言った。僕は本を置いて彼女を観た。

    「このへんにまだお酒飲めるおご御存知ありませんか」と彼女は言った。

    「朝の五時すぎにですか」と僕はびっくりして訊きかえした。

    「ええ」

    「ねえc朝の五時二十分っていえば大邸の人は酔いをさまして家に寝に帰る時間ですよ。」

    「ええcそれはよくわかってはいるんですけれど」と彼女はすごく恥ずかしそうに言った。

    「友だちがどうしてもお酒のみたいっていうんです。いろいろとまあ事情があって」

    「家に帰って二人でお酒飲むしかないんじゃないかな」

    「でも私c朝の7時半ごろの電車で長野にいっちゃうんです。」

    「じゃあ自動販売機でお酒買ってcそのへんに座って飲むしか手はないみたいですね」

    申しわけないが一緒につきあってくれないかと彼女は言った。女の子二人でそんなことできないからcと。僕はこの当時の新宿の町でいろいろと奇妙な体験をしたけれどc朝の五時二十分に知らない女の子に酒を飲もうと誘われたのはこれが初めてだった。断るのも面倒だったしcまあ暇でもあったから僕は近くの自動販売機で日本酒を何本かとつまみを適当に買いc彼女たちと一緒にそれを抱えて西口の原っぱに行きcそこで即座の宴会のようなものを開いた。

    話を聞くと二人は同じ旅行代理店につとめていた。どちらも今年短大を出て勤めはじめたばかりでc仲良くしだった。小柄な方の女の子には恋人がいて一年ほど感じよくつきあっていたのだがc最近になって彼が他の女と寝ていることがわかってcそれで彼女はひどく落ちこんでいた。それが大まかな話だった。大柄な方の女の子は今日はお兄さんの結婚式があって昨日の夕方には長野の実家に帰ることになっていたのだがc友だちにつきあって一晩新宿でよるあかししc日曜日の朝いちばんの特急で戻ることにしたのだ。

    「でもさcどうして彼が他の人と寝てることがわかったの」と僕は小柄な子に訊いてみた。

    小柄な方の女の子は日本酒をちびちびと飲みながら足もとの雑草をむしっていた。「彼の部屋のドアを開けたらc目の前でやってたんだものcそんなのわかるもわかからないもないでしょう」

    「いつの話cそれ」

    「おとといの夜」

    「ふうん」と僕は言った。「ドアは鍵があいてたわけ」

    「そう」

    「どうして鍵を閉めなかったんだろう」と僕は言った。

    「知らないわよcそんなこと。知るわけがないでしょう」

    「でもそういうの本当にショックだと思わないひどいでしょう彼女の気持ちはどうなるのよ」とひとのよさそうな大柄の女の子が言った。

    「なんとも言えないけど度よく話しあってみた方がいいよね。許す許さないの問題になると思うけどc
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