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時間をかけて理解されcそのせいで彼女をしゃべらせ続けていたエネルギーのようなものが狙われてしまったのかもしれない。

    直子は唇をかすかに開いたままc僕の目をぼんやりと見ていた。彼女は作動している途中で電源を抜かれてしまった機械みたいに見えた。彼女の目はまるで不透明な薄膜をかぶせられているようにかすんでいた。

    「邪魔するつもりなかったんだよ」と僕は言った。「ただ時間がもう遅いしcそれに」

    彼女の目から涙がこぼれて頬をつたいc大きな音を立ててレコードジャケットの上に落ちた。最初の涙がこぼれてしまうとcあとはもうとめどがなかった。彼女は両手を床について前かがみになりcまるで吐くような格好で泣いた。僕は誰かがそんなに激しく泣いたのを見たのははじめてだった。僕はそっと手をのばして彼女の肩に触れた。肩はぶるぶると小刻みに震えていた。それから僕は殆んど無意識に彼女の体を抱き寄せた。彼女は僕の腕の中でぶるぶると震えながら声を出さずに泣いた。涙と熱い息のせいでc僕のシャツは湿りcそしてぐっしょりと濡れた。直子の十本の指がまるで何かを――かつてそこにあった大切な何かを――探し求めるように僕の背中の上を彷徨っていた。僕は左手で直子の体を支えc右手でそのまっすぐなやわらかい髪を撫でた。僕は長いあいだそのままの姿勢で直子が泣きやむのを待った。しかし彼女は泣きやまなかった。

    *

    その夜c僕は直子と寝た。そうすることが正しかったのかどうかc僕にはわからない。二十年近く経った今でもcやはりそれはわからない。たぶん永遠にわからないだろうと思う。でもそのときはそうする以外にどうしようもなかったのだ。彼女は気をたかぶらせていたしc混乱していたしc僕にそれを鎮めてもらいたがっていた。僕は部屋の電気を消しcゆっくりとやさしく彼女の服を脱がせc自分の服も脱いだ。そして抱きあった。暖かい雨の夜でc我々は裸のままでも寒さを感じなかった。僕と直子は暗闇の中で無言のままお互いの体をさぐりあった。僕は彼女にくちづけしcをやわらかく手で包んだ。直子は僕の固くなったベニスを握った。彼女のヴァギナはあたたかく濡れて僕を求めていた。

    それでも僕が中に入ると彼女はひどく痛がった。はじめてなのかと訊くとc直子は肯いた。それで僕はちょっとわけがわからなくなってしまった。僕はずっとキズキと直子が寝ていたと思っていたからだ。僕はべニスをいちばん奥まで入れてcそのまま動かさずにじっとしてc彼女を長いあいだ抱きしめていた。そして彼女が落ちつきを見せるとゆっくりと動かしc長い時間をかけて射精した。最後には直子は僕の体をしっかり抱きしめて声をあげた。僕がそれまでに聞いたオルガズムの声の中でいちばん哀し気な声だった。

    全てが終ったあとで僕はどうしてキズキと寝なかったのかと訊いてみた。でもそんなことは訊くべきではなかったのだ。直子は僕の体から手を離しcまた声もなく泣きはじめた。僕は押入れから布団を出して彼女をそこに寝かせた。そして窓の外や降りつづける四月の雨を見ながら煙草を吸った。

    朝になると雨はあがっていた。直子は僕に背中を向けて眠っていた。あるいは彼女は一睡もせずに起きていたのかもしれない。起きているにせよ眠っているにせよc彼女の唇は一切の言葉を失いcその体は凍りついたように固くなっていた。僕は何度か話しかけてみたが返事はなかったしc体もぴくりとも動かなかった。僕は長いあいだじっと彼女の裸の肩を見ていたがcあきらめて
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