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。それを見てから私も眠ったのc安心して。

    六時に目覚ましたとき彼女はもういなかったの。寝巻を脱ぎ捨ててあってc服と運動靴とcそれからいつも枕もとに置いてある懐中電灯がなくなってたの。まずいなって私そのとき思ったわよ。だってそうでしょc懐中電灯持って出てったってことは暗いうちにここを出ていったっていうことですものね。そして念のために机の上なんかを見てみたらcそのメモ用紙があったのよ。洋服は全部レイコさんにあげて下さいって。それで私すぐみんなのところに行って手わけして直子を探してって言ったの。そして全員で寮の中からまわりの林までしらみつぶしに探したの。探しあてるのに五時間かかったわよ。あの子c自分でちゃんとロープまで用意してもってきていたのよ」

    レイコさんはため息をついてc猫の頭を撫でた。

    「お茶飲みますか」と僕は訊いてみた。

    「ありがとう」と彼女は言った。

    僕はお湯を沸かしてお茶を入れc縁側に戻った。もう夕暮に近くc日の光ずいぶん弱くなりc木々の影が長く我々の足もとにまでのびていた。僕はお茶を飲みながらc山吹やらつつじやら南天やらを思いつきで出鱈目に散らばしたような奇妙に雑然とした庭を眺めていた。

    「それからしばらくして救急車が来て直子をつれていってc私は警官にいろいろと事情を訊かれたの。訊くだってたいしたこと訊かないわよ。一応遺書らしき書き置きはあるしc自殺だってことははっきりしてるしcそれあの人たちc精神病の患者なんだから自殺くらいするだろうって思ってるのよ。だからひととおり形式的に訊くだけなの。警察が帰ってしまうと私すぐ電報打ったのcあなたに」

    「淋しい葬式でしたね」と僕は言った。「すごくひっそりしてc人も少なくて。家の人は僕が直子の死んだことどうして知ったのかってcそればかり気にしていて。きっとまわりの人に自殺だってわかるのが嫌だったんですね。本当はお葬式なんて行くべきじやなかったんですよ。僕はそれですごくひどい気分になっちゃってcすぐ旅行に出ちゃったんです」

    「ねえワタナベ君c散歩しない」とレイコさんが言った。「晩ごはんの買物でも行きましょうよ。私おなか減ったきちゃったわ」

    「いいですよc何か食べたいものありますか」

    「すき焼き」と彼女は言った。「だって私c鍋ものなんて何年も何年も食べてないんだもの。すき焼きなんて夢にまで見ちゃったわよ。肉とネギと糸こんにゃくと焼豆腐と春菊が入ってcぐつぐつと――」

    「それはいいんですけどねcすき焼鍋ってものがないんですよcうちには」

    「大丈夫よc私にまかせなさい。大家さんのところで借りてくるから」

    彼女はさっさと母屋の方に行ってc立派なすき焼鍋とガスこんろと長いゴムホースを借りてきた。

    「どうたいしたもんでしょう」

    「まったく」と僕は感心して言った。

    我々は近所の小さな商店街で牛肉や玉子や野菜や豆腐を買い揃えc酒屋で比較的まともそうな白ワインを買った。僕は自分で払うと主張したがc彼女が結局全部払った。

    「甥に食料品の勘定払わせたなんてわかったらc私は親戚中の笑いものだわよ」とレイコさんは言った。「それに私けっこうちゃんとお金持ってるのよ。だがら心配しないでいいの。いくらなんでも無一文で出てきたりはしないわよ」

    家に帰るとレイコさんは米を洗って炊きc僕はゴム
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