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c電話もかかってこなかった。寮に帰るたびに僕への伝言メモがないかと気にして見ていたのだがc僕への電話はただの一本もかかってはこなかった。僕はある夜c約束を果たすために緑のことを考えながらマスターベーションをしてみたのだったがどうもうまくいかなかった。仕方なく途中で直子に切りかえてみたのだがc直子のイメージも今回はあまり助けにならなかった。それでなんとなく馬鹿馬鹿しくなってやめてしまった。そしてウィスキーを飲んでc歯を磨いて寝た。

    *

    日曜日の朝c僕は直子に手紙を書いた。僕は手紙の中で緑の父親のこと書いた。僕はその同じクラスの女の子の父親の見舞いに行って余ったキウリをかじった。すると彼もそれを欲しがってぽりぽりと食べた。でも結局その五日後の朝に彼は亡くなってしまった。僕は彼がキウリを噛むときのポリcポリという小さな音を今でもよく覚えている。人の死というものは小さな奇妙な思い出をあとに残していくものだcと。

    朝目を覚ますと僕はベットの中で君とレイコさんと鳥小屋のことを考えると僕は書いた。孔雀や鴉やオウムや七面鳥cそしてウサギのことを。雨の朝に君たちが着ていたフードつきの黄色い雨合羽のことも覚えています。あたたかいベットの中で君のことを考えているのはとても気持の良いものです。まるで僕のとなりに君がいてc体を丸めてぐっすり眠っているような気がします。そしてそれがもし本当だったらどんなに素敵だろうと思います。

    ときどきひどく淋しい気持になることはあるにせよc僕はおおむね元気に生きています。君が毎朝鳥の世話をしたり畑仕事をしたりするようにc僕も毎朝僕自身のねじを巻いています。ベットから出て歯を磨いてc髭を剃ってc朝食を食べてc服を着がえてc寮の玄関を出て大学につくまでに僕はだいたい三十六回くらいコリコリとねじを巻きます。さあ今日も一日きちんと生きようと思うわけです。自分では気がつかなかったけれどc僕は最近よく一人言を言うそうです。たぶんねじを巻きながらぶつぶつと何か言ってるのでしょう。

    君に会えないのは辛いけれどcもし君がいなかったら僕の東京での生活はもっとひどいことになっていたと思う。朝ベットの中で君のことを考えればこそcさあねじを巻いてきちんと生きていかなくちゃとと僕は思うのです。君がそこできちんとやっているように僕もここできちんとやっていかなくちゃと思うのです。

    でも今日は日曜日でねcねじを巻かない朝です。洗濯をすませてしまってc今は部屋で手紙を書いています。この手紙を書き終えて切手を貼ってポストに入れてしまえば夕方まで何もありません。日曜には勉強もしません。僕は平日の講義のあいまに図書室でかなりしっかりと勉強しているのでc日曜日には何もすることがないのです。日曜日の午後は静かで平和でcそして孤独です。

    僕は一人で本を読んだり音楽を聴いたりしています。君が東京にいた頃の日曜日に二人で歩いた道筋をひとつひとつ思いだしてみることもあります。君が着ていた服なんかもずいぶんはっきりと思いだせます。日曜日の午後には僕は本当にいろんなことを思いだすのです。

    レイコさんによろしく。僕は夜になると彼女のギターがとてもなつかしくなります。

    僕は手紙を書いてしまうとそれを二百メートルほど離れたところにあるポストに入れc近くのパン屋で玉子のサンドイッチとコーラを買ってc公園のベンチに座って昼飯がわりにそれを食べた。公園では少年野球をやっていたのでc僕
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