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れどころか閑散としていると表現した方が近いかもしれませんね。広々としてc自然に充ちていてc人々はみんな穏やかに暮らしています。あまりにも穏やかなのでときどきここが本当のまともな世界なんじゃないかという気がするくらいです。でもcもちろんそうではありません。私たちはある種の前提のもとにここで暮らしているからcこういう風にもなれるのです。

    私はテニスとバスケットボールをやっています。バスケットボールのチームは患者というのは嫌な言葉ですが仕方ありませんねとスタッフが入りまじって構成されています。でもゲームに熱中しているうちに私には誰が患者で誰がスタッフなのかだんだんわからなくなってきます。これはなんだか変なものです。変な話だけれどcゲームをしながらまわりを見ていると誰も彼も同じくらい歪んでいるように見えちゃうのです。

    ある日私の担当医にそのことを言うとc君の感じていることはある意味で正しいのだと言われました。彼は私たちがここにいるのはその歪みを矯正するためではなくcその歪みに馴れるためなのだといいます。私たちの問題点のひとつはその歪みを認めて受けれることができないというところにあるのだcと。人間一人ひとりが歩き方に癖があるようにc感じ方や考え方や物の見方にも癖があるしcそれはなおそうと思っても急になおるものではないしc無理になおそうとすると他のところがおかしくなってしまうことになるんだそうです。もちろんこれはすごく単純化した説明だしcそういうのは私たちの抱えている問題のあるひとつの部分にすぎないわけですがcそれでも彼の言わんとすることは私にもなんとなくわかります。私たちはたしかに自分の歪みに上手く順応しきれないでいるのかもしれません。だからその歪みが引き起こす現実的な痛みや苦しみを上手く自分の中に位置づけることができなくてcそしてそういうものから遠離るためにここに入っているわけです。ここにいる限り私たちは他人を苦しめなくてすむしc他人から苦しめられなくてすみます。何故なら私たちはみんな自分たちが歪んでいることを知っているからです。そこが外部世界とはまったく違っているところです。外の世界では多くの人は自分の歪みを意識せずに暮らしています。でも私たちのこの小さな世界では歪みこそが前提条件なのです。私たちはインディアンが頭にその部族をあらわす羽根をつけるようにc歪みを身につけています。そして傷つけあうことのないようにそっと暮らしているのです。

    運動をする他にはc私たちは野菜を作っています。トマトcなすcキウリc西瓜c苺cねぎcキャベツc大根cその他いろいろ。大抵のものは作ります。温室も使っています。ここの人たちは野菜づくりにはとてもくわしいしc熱心です。本を読んだりc専門家を招いたりc朝から晩までどんな肥料がいいだとか地質がどうのとかcそんな話ばかりしています。私も野菜づくりは大好きになりました。いろんな果物や野菜が毎日少しずつ大きくなっていく様子を見るのはとても素敵です。あなたは西瓜を育てたことがありますか西瓜ってcまるで小さな動物みたいな膨らみ方をするんですね。

    私たちは毎日そんな採れたての野菜や果物を食べて暮らしています。肉や魚ももちろん出ますけれどcここにいるとそういうを食べたいという気持ちはだんだん少なくなってきます。野菜がとにかく瑞々しくておいしいからです。外に出て山菜やきのこの採取をすることもあります。そういうのにも専門家がいて考えてみれば専門家だらけですねcここはcこれはいいcこれは駄目と
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