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    彼女は首を曲げて僕の顔を見た。そしてこくんと肯いた。「十分じゃないと全然足りないの中間くらいね。いつも飢えてたのc私。一度でいいから愛情をたっぷりと受けてみたかったの。もういいcおなかいっぱいcごちそうさまっていうくらい。一度でいいのよcたった一度で。でもあの人たちはただの一度も私にそういうの与えてくれなかったわ。甘えるとつきとばされてc金がかかるって文句ばかり言われてcずうっとそうだったのよ。それで私こう思ったのc私のことを年中百パーセント愛してくれる人を自分でみつけて手に入れてやるって。小学校五年か六年のときにそう決心したの」

    「すごいね」と僕は感心して言った。「それで成果はあがった」

    「むずかしいところね」と緑は言った。そして煙を眺めながらしばらく考えていた。「多分あまりに長く持ちすぎたせいねc私すごく完璧なものを求めてるの。だからむずかしいのよ」

    「完璧な愛を」

    「違うわよ。いくら私でもそこまえは求めてないわよ。私が求めているのは単なるわがままなの。完璧なわがまま。たとえば今私があなたに向かって苺のシュートケーキが食べたいって言うわねcするとあなたはなにもかも放りだして走ってそれを買いに行くのよ。そしてはあはあ言いながら帰ってきてはいミドリc苺のショートケーキだよってさしだすでしょcすると私はふんcこんなのもう食べたくなくなっちゃったわよって言ってそれを窓からぽいと放り投げるの。私が求めているのはそういうものなの」

    「そんなの愛とはなんの関係もないような気がするけどな」と僕はいささか愕然として言った。

    「あるわよ。あなたが知らないだけよ」と緑は言った。「女の子にはねcそう言うのがものすごく大切なときがあるのよ」

    「苺のショートケーキを窓から放り投げることが」

    「そうよ。私は相手の男の人にこう言ってほしいの。わかったよcミドリ。僕がわるかった。君が苺のシュートケーキを食べたくなくなることくらい推察するべきだった。僕はロバのウンコみたいに馬鹿で無神経だった。お詫びにもう一度何かべつのものを買いに行ってきてあげよう。何がいいチョコレートムースcそれともチーズケーキ」

    「するとどうなる」

    「ずいぶん理不尽な話みたいに思えるけどな」

    「でも私にとってそれが愛なのよ。誰も理解してくれないけれど」と緑は言って僕の肩の上で小さく首を振った。「ある種の人々にとって愛というのはすごくささやかなcあるいは下らないところから始まるのよ。そこからじゃないと始まらないのよ」

    「君みたいな考え方をする女の子に会ったのははじめてだな」と僕は言った。

    「そういう人はけっこう多いわね」と彼女は爪の甘皮をいじりながら言った。「でも私c真剣にそういう考え方しかできないの。ただ正直に言ってるだけなの。べつに他人と変った考え方してるなんて思ったこともないしcそんなもの求めてるわけでもないのよ。でも私が正直に話すとcそんな冗談か演技だと思うの。それでときどき何もかも面倒臭くなっちゃうけどね」

    「そして火事で死んでやろうと思うの」

    「あらcこれはそういうじゃないわよ。これはねcただの好奇心」

    「火事で死ぬことが」

    「そうじゃなくてあなたがどう反応するか見てみたかったのよ」と緑は言った。「でも死ぬこと自体はちっとも怖くないわよ。それは本当。こ
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