抗とみることもできる。そこでだc江戸の殿に連絡しc特別なはからいにしたいと思う。すなわちc腕の立つ家臣に上意討ちを命じc駒山のあ

    とを追わせることにする。そちはここにいてc勘定奉行をつとめてくれ。わたしも話のわからぬ男ではないのだ」

    「ありがたいおぼしめし。しかしcそうはまいりません。親のかたき討ちを他人にまかせたとあってはc武士の名誉にかかわります。非は駒山にあるにせよc殺されたというのは修左衛門の不覚。わが赤松家の名折れでもあります。わたくしが自分でやります」

    修吾ははっきりと言う。城代は困った顔。

    「しかしc財政をゆるがせにしておくことはできないのだ。そちにいなくなられてはc藩として不便だ」

    「長くて一年c早ければ半年。その日時を下さい。かならずやりとげます」

    「そんなことを言うがcかたき討ちとは大変なことなのだぞ。当藩にだって前例がないわけではない。五年か十年で討てればいいほう。大部分はcかたきを追いつづけて一生を終ることになる」

    「そんなことにはなりません」

    「またcえらい自信だな。かりにc駒山を追いつめたとする。しかしcむこうも必死だ。勝てるとは限らぬぞ」

    「負けるかもしれないなど考えていたらcかたき討ちはできません。これは武士の意地にかかわることなのでございます。やつを討ちはたす。わたくしの心にあるのはcそれだけです」

    「そちがcそれほどまでに激しく武士の道に徹しているとは思わなかった」

    城代は意外そうな表情だった。

    「かたき討ちに出るのをcぜひcお許し下さい」

    修吾は熱心に主張した。もっともcこれにはわけがあった。修左衛門の死を知った時はc彼もかたき討ちなど気が進まなかった。成功率が一割にもみたずcのたれ死にが多いことなどcもちろん知っていた。

    困ったことになったなと思いながらc昨夜段落したあとc修左衛門の部屋へ入りc手文庫のなかを調べてみた。要領のいい人だったからcなにか万一の際のためにと書き残したものがあるのではないかと思って。そのたぐいはなんにもなかったがcひとつの鍵かぎが出

    てきた。

    なんの鍵だろうcそれはすぐにわかった。かたい材質の木で作られたc部屋のすみの押入れ。そこの錠にぴたりと合った。それをあけてみる。そしてc発見したのだ。

    いくつもの千両箱。からではなくcいずれも小判がつまっている。

    ははあc商人たちからのつけとどけをcためこんだというわけだな。修吾にはすぐにわかった。賄わい賂ろを取るこつをcそれとなく教えられていたからだ。

    修左衛門について部に悪評があったのはcこのためだな。しかしcそれを一掃するのにcこれはまたとない機会だ。赤穂浪士の義挙はc武士たちのあいだでcいまも敬服の念をもって語られている。先日cそれをあつかった芝居をする一座がcこの藩にも来てcいやに好評だ

    った。

    ここで親のかたきを討てばc修左衛門の悪評は消える。またc自分の名はいっぺんに高まりc武士のかがみという威信がつく。しかるのちに勘定奉行の地位につけばcどこからも文句が出なくなる。名実ともに藩の重要人物ということになる。しかしc他人にたのんで討ってもら

    ったのではcそうはいかないのだ。

    修吾は修左衛門の教育によりcいまや金の力